中国の ご 方言のことじゃなーんで


ここは、いわゆる広島弁の中でも呉地域の方言を集めたものです。胤森弘が書き残した
「呉方言50年の衰微」から使用例を抜粋し、私が方言を喋り 内容を補足しました。
「呉方言50年の衰微」とは記述での注意点著者・胤森弘と私呉方言の特徴

あ行か行さ行た行な行ま行や行ら行ワ/ン

  整理番号|呉方言('は強アクセント)|共通語で意味|資料記号|現代の使用頻度 A:知らない ~ C:よく使う

705
'ーサ
久しく
 
SHKZIFN
A
ヒーサ アワンカッタノー
ながらく あわなかったねえ
976
'ーツケル
電球を点火する
 
クロー ナッタケー モーソロソロ ヒーツケーヤ
暗く なったから もうそろそろ 電灯をつけよ
補足:
「火をつける」では大変なことだ。ここは「灯をつける」こと。その電球は(方言ともいえないが)「ホヤ」とも
言った。
706
ヒカキ
十能(じゅうのう) [炭火をかき回す棒]
 
SMHZN
B
フロバカラ ヒカキュー モッテキテクレ
風呂場から 十能を 持ってきてくれ
補足:
「~棒」と説明しているから火箸(ひばし)を連想してしまうが、実際は火鉤(ひかぎ)棒。ときには小さなスコップ/
柄杓(ひしゃく)状のものも指す。
707
ヒガナイチンチ
一日中
 
SMH
A
オマヤー ヒガナイチンチ ネトルンジャノー
おまえは 一日中 寝ているのだなあ
同意:724「ヒナカ」
708
ヒガラ
斜視(しゃし)
 
ヒガラジャロー、 ドッチミトルンカ ワカラン
斜視なんだろう、 どちらを見ているのか わからない
補足:
体の欠陥を指す言葉を、よく無神経に言ってた時代がある。
709
ヒキ
かえる(蛙)
 
SMHZN
A
ヒキガ ヨーケ オッタデ
カエルが たくさん いたぞ
補足:
地域により種類がまちまちだったろう。614「ドンビキ」はトノサマガエル、ヒキガエルはガマガエルらしいが、
広島地方で「ガマガエル」といってたのだろうか?
710
ヒキツリヒッパッタリ
親戚関係
 
K
A
アコト ウチャー ヒキツリヒッパッタリナンヨ
あのうちと 私の家は 親戚関係なんだよ
711
ヒキマワシ
マント
 
SMHZ
A
着物のうえからマントをよく着せられていた
補足:
マントも死語に近いが、「ひきまわし」はさらに知らないだろう。さらに、広島では「とんび」とは言わなかった
ように思う。
712
ヒコジル(ヒコズル)
ひきずる
 
SMHKFN
C
キモノー ヒコズッテ アルクナヨ
着物を ひきずって 歩くなよ
713
ヒザボーズ
ひざがしら(膝頭) [広辞苑、全方辞に見当たらない]
 
HFN
B
コロゲテ ヒザボーズー スリムイタ
ころんで 膝を すりむいた
補足:
「膝坊主」は方言といえるのかな?全国で通用する。ただ、一般には「膝小僧」というのだが。
714
ヒチ
質屋
 
HKF
B
質屋が「ひち」と書いた看板を電柱などでよく見かけた。「し」が「ヒ」に訛る例。
広島人のうたう民謡は「七里」がヒチリ。「七輪」をヒチリン。
補足:
東京の一部の下町で「ひ」の発音ができず「し」になったことは知られるが、その逆。といってもわずかな例
しかない。参考:715「ヒチクドイ」、1011「ヒチメンドークサイ」、716「ヒツコイ」、720「ヒテル」
715
ヒチクドイ
執拗にくどい
 
K
A
アンマリ ヒチクドイコトー ユーナ
あまり くどくどしいことは 言うな
1011
ヒチメンドークサイ
めんどうな
 
ソガナ ヒチメンドークサイ コトガ デキルモンカ
そんな めんどうな ことが できるものか
補足:
「ヒチ」は「ひち」の訛りで、接頭語として強調を意味する。例:ヒチウルサー=しちうるさい(とてもうるさい)
716
ヒツコイ
しつこい
 
SHK
C
マダヤルンカー、 ヒツコイノー
まだやるのか、 しつこいなあ
977
ビッシャ'
ずぶ濡れ
 
SHNF
ユーダチニ オーテ ビッシャコニナッタ
夕立に あって ずぶぬれになった
717
ビッタレ
だらしのないもの
 
MHZFN
B
アリャー ビッタレ ジャケー キタナーヨ
あれ(あいつ)は だらしないものだから 汚いよ
718
ヒッツキモッツキ
まつわりつくさま
 
N
C
アノ フタリャー ヒッツキモッツキ アルキヨル
あの 二人は まつわりつきながら 歩いている
719
ヒテーガイ(ヒテーガエ)
一日おき
 
SHKF
A
ウチャー ヒテーガイニ フロー ワカショール
わが家は 一日おきに 風呂を わかしている
補足:
この語の「ヒテー」は「一日(いちにち)」のことで、「ヒテージュー(一日中)」などと使われる。
参考:724「ヒナカ」
720
ヒテル
捨てる
 
MHFN
A
アリョー ヒテンヨーニ モットケヨ
あれを 捨てないように 持っておけよ
721
ヒドー(ヒドーニ)
はなはだ、ひどく
 
SHKF
C
ソガニ ヒドー オコンナヨ
そんなに ひどく 怒るなよ
722
ヒトクサレ
ひととおり
 
B
ヒトクサレ コーシャクー タレンニャー キガスマン
一通り 文句(講釈)を 言わないと 気がすまない
補足:
共通語では「ひとくさり(一齣)」といい、講談や講釈の「一つの話」をさす単位用語だった。
723
ヒト'ツコト
同じこと
 
SHF
B
イツモ ヒトツコトー ユーナヨ
いつも 同じことを 言うなよ
1012
ヒト'ツモ
少しも
 
イママデ ヒトツモ エーコトガ ナカッタ
いままで すこしも よいことが なかった
補足:
「一つだって~無い」の略で、「まったく」でもいいが、婉曲な言い回しで強さを和らげた言い方。
1013
ヒト'トコ
一カ所
 
ナヨーニ ナランヨ ヒトトコニ オイトケヨ
なくなら ないように ひとところに 置いておけよ
補足:
「ヒトツトコ」とも言う。「~トコ」は「~ところ」で、場所を指す言い方。例:オマエントコ=おまえのところ
(おまえの家)、エエトコ=いいところ(良家の意味もある)
978
ヒトトシヒラウ
ある程度の年齢になること
 
F
ヒトトシヒロータケー モー ヤルナヨ
いい年齢になったのでから もう するなよ
補足:
「一つ歳をとる」が転じたもの。広島弁では「拾う(ひろう)」は「ヒラウ」という。私は今日でもよく使うので、
漢字変換ができずに、方言と気づく。
724
ヒナカ
一日中
 
MH
A
ヒナカジュー アスンドッテ マダ アスブンカ
一日中 遊んでいて まだ 遊ぶのか
補足:
共通語では「日中」、昼中、半日ということになる…と筆者は解説している。
725
ヒボ
ひも(紐)
 
SMHF
A
コリョー ヒボデ ククットイテクレ
これを ひもで くくっておいてくれ
726
ビヤ
(果物の)びわ
 
MH
A
ビヤー エットクート ハラーコワスド
びわを たくさん食べると 腹をこわすぞ
727
ヒヤ'
冷たい
 
SZ
B
アシガ ヒヨー ナッテキタ
足が つめたく なってきた
728
ヒヤグ
かわく(乾く)
 
MHGFN
A
テンキガエーケー モー ヒヤイドローガ
天気がいいから もう 乾いているだろうね
同意:736「ヒル」
729
ヒョーケル(ヒョーゲル)
道化る、おどける
 
SHK
A
アツイァー イツモ ヒョーケテ オモシロイヨ
あいつは いつも おどけて おもいろいよ
補足:
「ひょうきん」という言葉があるが、関係があるだろう。
979
ヒヨッコリ(ヒョックリ)
思いがけず突然に、不意に
 
S
ヒョッコリ デンワー クレルケー タマゲタヨ
思いがけず 電話を かけてくるから 驚いたよ
補足:
この語は方言と言えるのだろうか? 「ヒョックシ」ということもあったし、この「ヒョックリ/ヒョックシ」が
方言だろう。
730
ヒョ'ットスル
ともすれば、[ひょっと=万一、もしも]
 
M
C
ヒョットスルト アツイガ モットルカノー
どうかすると あいつが 持ってるかなあ
731
ヒラクター
ひらたい、平坦
 
SMHF
A
ヒラクター オモシロイ カオー シトル
ひらべったい(平たい) おもしろい 顔を している
732
ヒラモチ
あん(餡)の入っていない丸い餅
 
SF
B
アンモチ ヨリャー ヒラモチノホーガ スキヨ
あんの入った餅よりは 入らない丸い餅のほうが 好きだよ
補足:
広島地方はご存じ“丸餅圏”だが、餡が入っていない(普通の)餅は平たいからそう呼んだ。なお、餡は「アンコ」
と言う。
733
'
よく泣く子
 
SMZGIF
B
オマエミタイナ ビリヤー(ビリワ) ドッカエイケー
おまえのような よく泣くやつは どこかへ行けよ
補足:
「びり」はふつう601「ドベ」のことだが、この「ビリ」はそれとは違う。泣き声のことで、「ビリビリ泣くな」
などと言う。
734
ヒル
きわみ(極み)
 
N
A
イツモ ゼイタクノ ヒルー ユートル
いつも 贅沢の 極みを いっている
735
'
小便をする
 
MZ
A
ハヨー ヒッテコイ
はやく 小便してこい
補足:
筆者は用例で「ヒッカケル」(ヒリカケル)としていたが、「引っかける」と混同するので私が書き換えた。
同意:701「バル」
736
'
乾く
 
MHK
A
モー ソロソロ ヒトロージャナイカ
もう そろそろ かわいているだろうね
補足:
漢字では「干る」だろうから、私も共通語だと勘違いしたときがあった。同意:728「ヒヤグ」
737
ヒルノヒッパチ
ひるひなか(昼日中)
 
SHKGF
A
ヒルノシッパチカラ ネトッチャー ダメデ
昼のひなかから 寝てては だめだぞ
738
ヒワル
かわむ
 
SHHKZGFN
B
ヒワルケー ヒナタニ オクナヨ
たわむから 日のあたるところに 置くなよ
1014
ヒワ'ルサ
火遊び
 
カジニ ナルケー ヒワルサー スナヨ
火事に なるから 火遊びは するなよ
補足:
参考:919「ワルサ」
739
ヒンチ
命日、(日時の)日にち
 
SFN
A
オヤジノ ヒンチ ジャケー アスビニ イカレンワイ
おやじ(父)の 命日だから 遊びに いかれないよ
エット ヒニチャー タットランケー エエヨ
たいそう 日にちは 経っていないから 大丈夫だよ
補足:
「命日」という特別な意味をもった用法とは別に、私が一般的な「日にち」の意味の用例を足した。