中国の ご 方言のことじゃなーんで


ここは、いわゆる広島弁の中でも呉地域の方言を集めたものです。胤森弘が書き残した
「呉方言50年の衰微」から使用例を抜粋し、私が方言を喋り 内容を補足しました。
「呉方言50年の衰微」とは記述での注意点著者・胤森弘と私呉方言の特徴

あ行か行さ行た行な行ま行や行ら行ワ/ン

  整理番号|呉方言('は強アクセント)|共通語で意味|資料記号|現代の使用頻度 A:知らない ~ C:よく使う

774
ボイツカウ
こき使う
 
SFN
A
ボイツカワレテ モー ヘコタレタ
こきつかわれて もう へこたれた
775
ホイデモ(ホイデ)
それでも(それで)
 
SMFN
C
ホイデモ アンナガ アーユーンジャケー
それでも あいつが あのように言うのだから
補足:
類似:450「セーデ」、755「ヘーデ」、775「ホイデ」
776
ホイト
乞食
 
SMKZGF
B
ソガナモノワ ホイトニ ヤレーヤー
そんなものは 乞食に やれよ
補足:
陪堂(ホイトウ)が転じた言葉とされる。乞食も陪堂も本来は仏教用語で托鉢の行(ぎょう)などを指すが、転じて
「物乞い」などを蔑視する語となった。
777
ホイタラ(ホイナラ)
そしたら(それなら)
 
SMHKF
C
ホイタラ モー イノーカ
それなら もう 帰ろうか
778
ホエズル
なく
 
HM
B
アトデ ホエズリ カクナヨ
あとで 泣くのでは ないよ
補足:
共通語では「ほえずら」だろう。
779
'ーカイ(ホーカ)
そうかい
 
SFN
C
ホーカイ ホーカイ ユーダケジャノー
そうかい そうかい(と) いうだけだねえ
補足:
呉では「ホーカ」のほうが一般的だったように思う。同様に「ホーヤ」「ホーノ」もあったが、いずれもが相槌
(あいづち)言葉。近年では「そーなんだ」を連発する若者がいる。
780
ホーグヤ(ホーグカイ)
反古買
 
SMHKG
A
ソガナ モナー ホーグヤモ モッテカンド
そんな ものは 反古買も 持って行かないぞ
補足:
『約束を反古にする』などの「ほご」はダメなもの、ゴミなどを指す。反古買は紙屑、古帳面、古本、古着などを
扱っていた。廃品回収業の一形態、今風に言えばリサイクル業者。
781
ホータラカス
放置する
 
KF
B
ソリャー イルンジャケー ホータラカスナヨ
それは いる(必要な)のだから 放置するなよ
補足:
現在では「ホッタラカス」だろう。呉では「ホッチョク」「ホッチョケ」などの“ちょる”言葉もよく使われたと
思う(私はそうだった)。
782
ホートロヌルイ(ホータラヌルイ)
のろい
 
GFNMH
A
ホンマニ ホートロヌルイ ヤツジャノー
ほんとうに のろい やつだねえ
補足:
類似:743「フータラヌルイ」と共に、広島弁ではないと思う。広島弁(呉も)では「トロイ」とか「トロクサイ」
とかだったろうが、ここには取り上げられていない。
783
ボーブラ(ボーフラ)
南瓜(なんきん)、カボチャ
 
SMHKZFN
B
キョーモ マタ ボーブラー ニタンカ
今日も また カボチャを 煮たのか
補足:
「カンボジア」が語源の「カボチャ」は各地でいろいろな名で言われていて、唐茄子(トウナス)なんてのもあった
が、広島では「ぼうふら」だった。
784
ホーベタ
ほほ(頬)、ほっぺた
 
SMHF
B
ホーベタガ オチルクイ ウマイノー
ほほが おちるくらい おいしいねえ
785
ホーリホーリスル
何もしないでうろついている
 
F
A
ホータホーリセンデ ナンカセーヤ
うろうろしないで なにかしろよ
786
ホガ'
体が熱くなる
 
KGFN
A
アサカラ テツダワサレテ カラダガ ホガルコトガ
朝から 手伝わされて 体が あつくなるよ
補足:
共通語では「ほてる」という。なお、用例の最後の「~コトガ」は不完全終止な「~ことが…」は感慨をにじませ
た言い方(「なんとも~することよ」)で、方言というわけではない。ただ、呉ではこの言い回しが多いと感じる。
787
'
ほうき(箒)
 
SMHF
A
ヨゴレタケー ホキューモッテキテ ハケーヨ
汚れたから ほうきを持ってきて 掃けよ
788
'
湯気
 
MZN
A
アツーテ アタマカラ ホケガ デヨーラ
暑くて 頭から 湯気が でてるよ
789
ホグル
穴をあける
 
アッチコッチ ホグットッタラ オチルド
あちらこちら 穴をあけていたら 落ちるぞ
補足:
「穴をあける」というより「穴を掘る」が適当だと思うが…。
790
ホゲル
欠ける
 
MZN
A
ケガースルケー ホゲタヨウナ チャワンオ ダスナ
けがをするから 欠けたような 茶碗を 出すな
同意:344「コゲル」
791
ホゴ'
赤ん坊を入れる藁製の籠
 
HZGFN
A
全国方言辞典に「嬰児籠」広島県安芸郡、とあるから特別気になる語である。幼少のころ
弟たちがなわであんだ まるい かごにいれられていた。これにはヒツをいれていたように
おぼえている。
補足:
筆者がいかに“ひらかな”を多用していたかがわかる説明文。なんだか解説が必要なくらいだ。「ヒツ」はご飯を
入れる「おひつ」。
792
ホシー
惜しい
 
MHZ
B
ホシー ヒトー ナーヨーニシタノー
惜しい 人を なくしたねえ
793
ボソイ
少ない、物足りない
 
HZFN
A
タッタ ソイダケカ、 ソレジャー ボソイノー
たった それだけか、 それでは ものたりないねえ
補足:
「心細い」の“ぼそい”だ。「食が細い」などといい、「細い」と「少ない」はある部分で同意語。
794
ホタエル
うろたえる
 
MHZN
A
アトデ ホカエテモ シランド
あとで うろたえても しらないよ
795
ポチ
祝儀、こころづけ
 
HFN
A
ゼニャー ノーテモ ポチワ ハズメーヨ
金(銭)は なくても 祝儀は はずんで出せよ
補足:
「ポチ袋」や「これっぽち」なんて、全国どこでも通用するけど、本来「ぽち」は「小さい」を意味する京都を
起源とした関西広域の方言だったようだ。
980
ホッタラカス
そのままにする、かまわない
 
S
イママデ ホッタラカシテ イマサラ ナニューユーンカ
今まで かまわないでいて いまさら なにをいうのか
補足:
私は「ホットラカス」といったものだが…。「~らかす」は「散らかす」「言いふらす(言いふらす)」など。
関連:797「ホットク」
796
'ッチン
芯のあるご飯
 
FN
B
ソガナ ホッチンメシャー クエンジャロー
そんな 芯のある飯は 食べられないだろう
補足:
私にとって「ホッチン」は“ほっちん”以外のなにものでもないので、人にうまく説明できない。他の地方では
何と言うのだろう?
797
ホットク
なげておく、かまわない
 
F
C
ホットクニ ホットカレンケー ヤレヨ
なげておくわけにも いかないから やれよ
補足:
「放る(ほうる)」が「ほる」になっている方言は各地にあり、地方により意味が異なる。「それ、ほっといて」と
言われて“それ”を「捨てる/かたづける」と解釈するところと、そのままで「無視する」ところ。広島弁は後者。
798
'ッポ
ふところ(懐)
 
FN
A
ゼンブ ホッボニ ナイナイシチャー イケンヨー
全部 ふところに 入れてしまったら いけないよ
補足:
私は「ポッポ」と言っていた。「ポッポ」は“おなか”、腹の幼児語(「ぽんぽん」と同じ)。ついでに用法中の
「ナイナイ」も本来は幼児語で隠すこと。
799
ホトビル
ふやける
 
HKZN
A
ナガイコト フロニ ハイットッルケー ホトビタロー
長いこと 風呂に 入っているから ふやけたろう
800
ホボローウル
 
SMHKZGIFN
A
全国方言辞典に「嫁が無断で里にかえること」とある。ハブテテカエルわけである。ふろし
きづつみをもっている友人に「ホボローウルンカ」とひやかしたものである。
補足:
文献の各方言書籍が全て取り上げている代表的な広島弁であるのに、残存区分はA(使わない/知らない)である。
なお、説明中のハブテテカエルは「機嫌を損ねて(実家に)帰る」ということ。693「ハブテル」を参照ください。
801
ボロカスニユー
ぼろくそに言う
 
K
C
ヨーモ ソー ボロカスニ イエタモンジャノー
よくも そんなに ぼろくそに 言えたものだねえ
802
ホロセ
発疹(ほっしん)、ジンマシン(蕁麻疹)
 
ZN
A
「ダカラサー」ユーノーキータラ ホロセガデルヨ
「だからさぁ」というのを聞いたら ジンマシンが でるよ
補足:
東京風な喋り方をするのを聞くと、厭味に感じた時代だ。用例でのホロセはもちろん本物の病気(アレルギー)では
ない。
803
ボンクラ(ボンクー)
不良青少年
 
SHKF
C
アガナ ボンクラト アスブナヨ
あんな 不良と あそぶなよ
補足:
ぼんくらは「盆暗」と書く賭博用語が語源という説もあり、共通語では「よくわかっていない/まぬけ/頭
の悪い」の意味で使われ、転じて「悪いことをする人間」を指す。広島弁ではさらに若い者を対象に使っている。
804
ホンナラ
それなら
 
SHKF
C
ホンナラ モー ヤメヨー(ヤミョー)ヤ
それなら もう やめようや
補足:
「ホイナラ」という人もいたろう。反対または否定は775「ホイデモ」。筆者は書いていないが「ホー(=そう)」
「ホイ~(=それ~)」が原形。
805
ホンマ
ほんとう
 
SMKZI
C
ソリャー ホンマニ デキルンカイノー
それは ほんとうに できるのかねえ