中国の ご 方言のことじゃなーんで


ここは、いわゆる広島弁の中でも呉地域の方言を集めたものです。胤森弘が書き残した
「呉方言50年の衰微」から使用例を抜粋し、私が方言を喋り 内容を補足しました。
「呉方言50年の衰微」とは記述での注意点著者・胤森弘と私呉方言の特徴

あ行さ行た行な行は行ま行や行ら行ワ/ン

  整理番号|呉方言('は強アクセント)|共通語で意味|資料記号|現代の使用頻度 A:知らない ~ C:よく使う

209
カー
(強調)
 
SMHZGIFN
A
カー ハラガ タッテノー
つい 腹が 立ってねえ
補足:
「つい」と訳しているが、実際は特に意味がない感情発露で発する言葉。こんな言葉をよく書き出したものだ。
990
'ーハル
意地を張る
 
ソガニ ガーハランデ エーカゲンニ セーヨ
そんなに 意地を張らないで ほどほどに しろよ
補足:
「我を張る」だろう。「我」は「ワ」も「ワレ」あり、「ガ」には他に「ガガツヨイ」(我が強い)などもある。
210
カイ'
痒い(かゆい)
 
SHKFN
C
カイケリャー ヒトリデ カケヨ
かゆいんだったら ひとりで かけよ
939
カオーノゾケル
顔を出す、出席する
 
ナゴー コンカッタガ チーター カオーノゾケーヨ
ながらく 来なかったが 少しは 顔をだせよ
211
カオムケガナラン
不義理で顔もあわせられない
 
F
B
アノヒトニャー カオムケガナランノンジャー
あの人には 顔をあわせられないんだよ
212
カガエル
凍える(こごえる)
 
SMHZ
A
テガ カガエテ ジガ カケンワイヤ
手が こごえて 字が 書けないよ
213
カガツ
やきもの、陶器、擂鉢(すりばち)
 
SHKFN
A
カガツデ スッテミヨ
すり鉢で すってみろよ
補足:
関連:248「カラツ」 このカラツの行訛であろう。
214
カガリ
焼煙、油煙、すす
 
SF
A
カガリガ タツケー モー モヤスナヨ
焼煙が たちあがるから もう 燃やすなよ
補足:
篝火(かがりび)という言葉もあり、この場合の「かがり」は火なのだが、方言ではそうではない。
215
カグル
ひっかく
 
HKZ
C
ソノキザー カグラレタン ジャローガ
その傷は ひっかかれたの だろう
216
カケトリ
集金人、掛を取る人
 
MH
A
ハヨー カクレンニャー カケトリガ キヨルド
早く 隠れないと 集金する人が やってくるぞ
補足:
その昔、月末や年末には家賃や買い物のツケ、借金の集金が日常的な時代もあったものだ。
217
カケラカス
無駄走りさせる
 
SMHGF
A
ドダイ アイツニャー カケラカサレタンヨー
まったく あいつには 無駄走りをさせられたよ
218
カケ'リコム
走り込む
 
MH
B
ユーベ アイツガ カケリコンデキタヨ
ゆうべ あいつが 走りこんできたよ
219
カゴム
屈む(かがむ)、しゃがむ、礼をする
 
SZF
C
ソンナトキニャー カゴンデ センニャー
そんな時には 屈んで しなければ
補足:
「かごめかごめ」という童歌があるように、「カゴム」は広島だけでなく広い地域で使われている。
220
カザム(カダム)
においをかぐ
 
HGFN
A
カザンデミーノー、 クサイケー
においをかいでみろよ、 臭いから
221
カジガイク
火事になる
 
K
B
カジガイッタラ オシマイデ
火事になったら おしまいだぞ
222
カジケル
かじかむ、凍る
 
SMHKGN
B
テガ カジケテ モテルモンカ
手が かじかんで もてるものか
補足:
用例の中の「もてるもんか」は「手で持てない」ではなく、「維持できない」が転じて「たまらない/我慢
できない」で、方言的表現だろう。参考:853「モテン」
940
カス
水に漬ける
 
SHKF
ナガイコト カシトカント クワリャーセンヨ
長い間 水に漬けておかないと 食べられないよ
223
カズエル
かぞえる
 
SMHF
C
カズー カゾエルノニ マチガウナヨ
数を かぞえるのに 間違うなよ
224
カズク
帽子をかぶる
 
SMHKZN
B
カズカンニャー ヒニヤケルド
かむらないと 太陽にやけるぞ
参考:
広辞苑に「かずく[被く]:頭にのせる、いただく」とあるようだ。
225
カタオ
片輪(かたわ)
 
M
A
ソガナコトー ショッタラ カタオニ ナルゾ
そんなことを していると 片輪に なるぞ
補足:
「かたわ」は「不具者」のこと。今日では差別用語/不適切語であろう。
226
カタキノヨーニ
執念深く同じ物を続けて使うこと
 
FK
B
カタキノヨーニ キルモンガ アルカ
同じものを続けて 着るものでは ないよ
補足:
共通語での意味とはかけ離れた意味なので方言といえるのだろう。「かたきみたいに」または「かたきみとーに」と耳にしていたのだが…。
227
カタギ
堅い木
 
MHZ
A
カタギニ センケー オレルンデ
堅木に しないから 折れるんだぞ
補足:
私は聞いたことない。例はチャンバラごっこでの会話だろう。
228
カタグ
になう、担ぐ
 
SMHZG
A
コガナモンガ カタイデ アルケルカー
こんなものが かついで 歩けるものか
参考:
広辞苑に「担ぐ:肩にになう、かつぐ」とあるようだ。関連:249「カルー」
229
カタチンバ
2つあるもののうちの片方
 
KF
B
ヨーミーヤー、 コリャー カタチンバジャ
よく見ろよ、 これは 片方が違っているよ
補足:
「跛(ちんば)」という障害用語(差別用語/不適切語)がある。しかし「カタチンバ」(本来は「ちんば」と
同じ)は人を対象としていないのでそういう用語ではない。
230
カタッポー
履物などの片一方
 
F
C
モーカタッポー ドコニ ヤッタンカ
もう一方を どこに やったのか
同意:231「カタツラ」、232「カタヒラ」
231
カタツラ
片方、履物などの片一方
 
SN
A
カタツラー サガシテクレ
片一方のものを 探してくれ
補足:
私は「カタツロ」と言ったが…。同意:230「カタッポー」、232「カタヒラ」
232
カタヒラ
片側
 
F
A
カタヒラオ イヌガ モッテッター
片側を 犬が くわえていった(犬は持てないからね)
同意:230「カタッポー」、231「カタツラ」
233
カダム(カザム)
匂いを嗅ぐ
 
MHZ
A
ワシノ ヘデモ カダメー
おれの 屁でも 嗅げ!
234
'ッソー
ボサボサの乱髪
 
SHKZG
A
ナンジャー ソノアタマー、 オオガッソーシテ
なんだ その頭は、大乱髪をして
235
カッチン
借金、代金後日払い
 
SHK
A
キョウノ トコラー カッチンデ タノミマス
今日の ところは 借金ということで 頼みます
236
ガッチンコ
鉢合わせすること
 
SN
C
ガッチンコシテ トートー イカレンカッタ
(期日が)重なったので とうとう 行けなかった
237
カッテバ
台所
 
MHF
B
オトコガ カッテバニ クルモンジャー ナイヨ
男が 勝手場に 来るものでは ないよ
238
カッポン
いたどり
 
HMKZ
C
カッポン トリニ イコーヤー
いたどりを 取りに 行こうねえ
補足:
今では単なる雑草のイタドリだが、昔はとって食べたものだ。取り立ては折るとポキっと音がしたので、
このように言った。同意:359「コッポン」
239
カバチ
文句を言う
 
SMHKZIGFN
B
カバチュー タレナ
文句を 言うな
補足:
ここで「文句」というのは弁解や屁理屈のたぐい。「ごちゃごちゃぬかすな」というところ。
240
カブル
かみつく
 
KZ
B
イヌニ カブラレタンカ
犬に かみつかれたのか
補足:
共通語では「物を噛んで食う。かじる」の意味で、「噛みつく」とは少し違っている。
941
ガボガボ
大きすぎてずばずば、だぶだぶ
 
S
コガナ ガボガボー ヨー キトルノー
こんな 大きすぎるものを よく 着ているねえ
241
カベ
かび
 
SMHK
B
カベノ ハエタ モチャー イランヨー
かびの生えた 餅は いらないよ
242
カマ'
からかう、相手をしてやる
 
SMHKGF
C
カモーテ ヤランケー ナキヤマンジャロー
かまって やらないから 泣き止まないだろう
補足:
ニュアンスが異なる「関わる」の意味もあり、「カマヤーセン」と否定で使うことが多い。
243
カマギ
かます
 
SGHZFN
A
ムカシャー イモー カマギニ イレトッタ
昔は 芋を かますに 入れていた
補足:
生活様式の変化でもうずいぶん前から存在しない用具だ。
244
ガメル
ものをごまかして盗る(とる)
 
SHKZG
B
イエカラ ガメテ モッテキタンジャロー
家から ごまかして 持ってきたのだろう
補足:
盗むこと、泥棒なのだが、やや軽く「ちょろまかす」程度。
245
カヤル(カヤス)
ひっくりかえる
 
SHKF
B
カヤランヨーニ キーツケテ イケーヨ
ひっくりかえらないように 気をつけて 行けよ
246
カラ'
からだ
 
SHKZ
B
オオキナ カラーシトルノニ ドーナットルンカ
大きな 体をしているのに どうなっているのか
補足:
「からだ」が省略されたのではなく、大柄などの「柄(がら)」の行訛と思われる。
247
カラゲ'
裾を端折る(はしょる)
 
SMHZ
A
アメガ フルケー キモノー カラゲンニャー
雨が 降るから 着物を 裾を端折らなければ
補足:
「からげる」は方言なのだろうか? 「合羽からげて三度笠…」私の知ってる橋幸夫の歌だが…。
248
カラ'
陶器
 
SMHKZN
A
カラツー ワランヨーニ モッテ イケーヨ
陶器を 割らないように 持って ゆけよ
補足:
関連:213「カガツ」。唐津のやきものからきた「カラツ」は広い地域でも言うが、広島ではイントネーション
が異なる。また、書かれていないが、陶器は「セトモン」(瀬戸物のこと)と言う方が多かったように思う。
249
カル'
になう、担ぐ、背負う
 
Z
B
ソレグライナ モナー カルーテ イケーヤー
それくらいの ものは になって いけよ
補足:
余談だが、山口の方でも言うようだ。関連:228「カタグ」
250
カワイゲガナイ
かわいらしくない、憎ったらしい
 
SF
C
クレンノンカー、 カワイゲガナイ ヤツジャノー
くれないのか、 かわいらしくない やつだなあ
251
ガワ
周囲、周辺、隣近所
 
F
A
ガワガ ウルサイケー モー イクナヨ
周囲が うるさいから もう 行くなよ
補足:
内側、外側の「側」が語源だろう。近所ということでは653「ネキ」が類似している。
252
カンカラボシ
天日に干す
 
F
B
クツァー カンカラボシニ ホサンコトデ
靴は 天日に直に(ぢかに) 干さないことだ
253
カンカンゼミ
羽根が透き通った大型の蝉
 
HF
A
モー カンカンゼミノ デルコロヨノー
もう 蝉の 出る頃だねえ
補足:
蝉には詳しくないが「ヒグラシ」のことだろう。「カナカナ」とも呼ばれる蝉だ。
254
カンコロ
さつまいもの切り干し
 
HZG
A
カンコロイモー クータコトガ アルカ
切り干し芋を 食べたことが あるか
255
ガンス
ございます
 
SMHKGIFN
B
「ナンデガンスカ」 ユーノー ヨー キイタノー
「なんでございますか」と言うのを よく 聞いたものよ
補足:
響きは硬い言葉だが丁寧語だ。広島弁を代表する言葉だが、この例にあるように兄の時代には既に使って
いなかったようだ。親世代は時に使っていた。
256
ガンチ
片目
 
A
モリノイシマツワ ガンチ ジャッタンヨ
森の石松は 片目 だったんだよ
257
カンバレ
しもやけ
 
H
A
ムカシャー ヨー カンバレデ カイカッタノー
昔は よく しもやけで かゆかったねえ
補足:
山口でも聞かれる。「寒腫れ」とでもいうところだろうか?
258
'ンボー
いたずら子
 
SHKZGFN
B
コノ ガンボータレガ ワリーコトー ショッタ
この いらずら子が 悪いことを していた
259
カンマン
よろしい、かまわない
 
SF
B
カンマンケー ハイッテコイヨ
いいから 入って来なさいよ