中国の ご 方言のことじゃなーんで


ここは、いわゆる広島弁の中でも呉地域の方言を集めたものです。胤森弘が書き残した
「呉方言50年の衰微」から使用例を抜粋し、私が方言を喋り 内容を補足しました。
「呉方言50年の衰微」とは記述での注意点著者・胤森弘と私呉方言の特徴

か行さ行た行な行は行ま行や行ら行ワ/ン

  整理番号|呉方言('は強アクセント)|共通語で意味|資料記号|現代の使用頻度 A:知らない ~ C:よく使う

54
イーエノー
ちがいます[否定の答え方]
 
SF
C
イーエノー、 ソガナコター シマセンヨ
違います、そんなことは しませんよ
類似:128「ウンニャ」
927
イーヤイコ
言い争い
 
S
モー イーカゲンに イーヤイコー ヤメーヤー
もう いい加減に 言い争いを やめろよ
補足:
用例中の「イーカゲン」の「イー」は、「エー」とする方が多い。参照:130「エー」
55
'ーヨル
言っている
 
F
C
マダ ソガナコトー イーヨルンカ
まだ そんなことを いっているのか
補足:
「イヨール」とか「ヨール」とかもあると思うのだが…
56
イーンサル
言われる
 
F
B
イケー イーンサッタガ イカレンヨ
行け(と)言われたが いかれなかったよ
補足:
「~なさる」形の丁寧語
928
イガ
魚の小骨
 
SH
ノドニ イガガ ササッテ イタカッタヨ
のどに 魚の骨が ささって 痛かったよ
補足:
クリなどの毬(いが)は共通語だが、魚の骨を指すところが方言となろう。
929
イガイー
いがいがしたようなかゆさ
 
SH
セナカガ イガイーケー カイテクレーヤー
背中が かゆいから かいてくれよ
57
イカノ'シタ
床の下
 
HF
A
イカノシタニ ネコガ コーウンドル
床の下に 猫が 子を生んでいる
58
イガム
ゆがむ、曲がる
 
SHGNKF
C
イガンドルケー マッスグ セーヤー
曲がっているから まっすぐに しろよ
59
イガ'
かんだかくさけぶ
 
SNMHKZGF
C
ソガニ イガルナヤー
そんなに かなきりごえで叫ぶなよ
補足:
共通語に訳しにくい方言のひとつ。「甲高く叫ぶ」とも言い切れない。
60
イギ
魚の小骨
 
MHKZFN
A
ノドニ イギガ タッタ
のどに 魚の骨が ささった
同意:928「イガ」
61
イキシニ(イキシナニ)
いきがけに、行き際
 
SKF
C
イキシニ モローテ イケヨ
行くときに もらって いけよ
関連:94「イニシニ」
62
イキズム
腹に力をいれる
 
SMHZN
A
アンマリ イキズンダラ デルド
あまり りきんだら 出るぞ
補足:
なにが“出る”のでしょうね…ご想像ください。
63
イキナ'
お行きになる
 
K
B
ウチノ バーサンガ ヨー イキナルンデ
私のうちの おばあさんが よく おゆきになるよ
補足:
「~なさる」形の丁寧語。「イキナル」は古いが、「イキンサル」はよく使われる。
64
イキル
さわぐ、あばれる
 
SNMHKZF
A
アンマリ イキルト ドヤスド
あまり 暴れると なぐりつけるぞ
65
イグイー
のどを刺激すること
 
M
B
コリャー イグイーケエー クワレンヨ
これは のどを刺激するから 食べられないよ
同意:143「エグイー」
66
'グチ
[参考]広辞苑に「欠唇、兎唇、みつくち」とある
 
KZ
A
補足:
現在では差別用語として扱われるであろう言葉。あえて書き残している。
67
イケ'
埋める
 
SMHK
B
ツチン ナカニ イケトケーヨ
土の 中に うめておけよ
68
イケン
悪い、よくない
 
SHKF
C
イケンナー ヨー ワカットル
よくないのは よく わかっている
反語:30「エー」、類似:937「ワリー」
69
イゴイゴスル
身動きする
 
KGIFN
B
イゴイゴスルケー ネリャーリャー センヨー
身動きするから 寝られは しないよ
補足:
70「イゴク」の重畳語
70
イゴク(イゴカス)
うごく(うごかす)
 
SMKF
B
イゴカズニ オレヨ
動かないで いろよ
71
イゴガンギ
曲がっている様子
 
GN
A
コノミチャー イゴガンギニ ナットル
この道は デコボコに なっている
72
イコル(イコス)
火をおこす
 
SMHZF
A
モー イコッタンカー
もう (炭に)火がついたのか
73
イシガケ
石垣
 
SMF
B
イシガキニ トカゲガ オッタド
いしがきに トカゲが いたぞ
補足:
「石垣」と「石崖」は厳密には異なるが、ここでは石崖ではなく石垣の行訛としている。
930
イジク'
乱雑に扱い、もてあそぶ
 
SH
アンマリ イジクリヨッタラ ナオランヨーニ ナルド
あまり もてあそんでいたら なおらなく なるぞ
補足:
「いじる」を繰り返すこと。強調して「イジクリマワス」とも言った。
74
イタシ'
むつかしい
 
SMHKZGIFN
C
キョーノ モンダイワ イタシカッタノー
今日の 問題は 難しかったねぇ。
補足:
こんにちでも広い地域で日常的に使われる言葉のひとつ。反語:832「ミヤスイ」。
75
イタズリ
(野草の)いたどり
 
MHK
A
イタズリワ マダ スイカローガ
いたどりは まだ すっぱいだろう
補足:
私は「カッポン」と言ってましたね。
76
イタマゴイ
いとまごい(暇乞い)、死者との別れ
 
SNHF
A
アレガ イタマゴイニ ナローターノー
あれが 永遠のわかれに なるとはねえ
77
イチコロ
たやすい、ひとたまりもない
 
SKZ
C
ソガナコター イチコロデ デキラー
そんなことは たやすく できるよ
78
イチガイ
強情、頑固
 
SMHKZFN
B
オマヤー イチガイボーズ ジャノー
おまえは 頑固者 だなあ
79
イツイキ
いつも
 
SZMKHGIFN
A
ワリャー イツイキ オコラレトルノー
おまえは いつも しかられているなあ
80
イッケ
親戚
 
SMHKZF
A
アコト ウチャー イッケヨ
あのうちと 私のうちとは 親戚だよ
補足:
イッケとは「一家」であろう。促音で「アッコ」とも言う。
81
'ッコン
ひとつ
 
KZF
C
イッコンデ エーケー クレーヤー
ひとつで いいから くれよ
補足:
「個」は「コン」と言い、二つ「ニコン」、三つは「サンコン」など。
82
イッサンキ
一気、一目散
 
SKN
A
イッサンキデニ ニゲテ イッタド
一目散に 逃げて いったぞ
補足:
「一目散」と「一気」が一緒になって「イッサンキ」とは笑えます。
83
イッショコタ(イッショクタ)
一緒
 
SFN
B
トートー シッショコタニ シテシモータ
とうとう 一緒に してしまった
補足:
別々のものがまとまる「一緒」というより、「ごちゃまぜ」のこと。
84
イッソ
とんと、まったく
 
HZN
B
イマゴラー イッソ コンヨーニ ナッタノー
今ごろは とんと 来なく なったねえ
補足:
共通語の「一層」が縮まった「いっそ」と多少ニュアンスが異なって使われる。
85
イッチ
一番
 
KGIFN
A
アンタガ イッチ エーヨー
あなたが 一番 良いよ
86
イッチョ'ーライ
晴着(はれぎ)
 
SHKZFN
B
イッチョーライ ジャケー ヨゴスナヨ
はれぎ だから 汚すなよ
同意:594「トットキ」
87
イッテカエリマス
(外出時のあいさつ)
 
HKZFN
C
ソイジャー イッテカエルケーノー
それでは いってくるからね
補足:
「イッテクケーノー」となっていたので訂正したが、あながち誤りでもなかったろう。
88
イツナ'イト
いつなりと
 
F
B
イツナイト トリニキンサイヨ
いつでもよいから 取りに来なさいよ
89
イツモカツモ
いつもいつも、しょっちゅう
 
SMHF
B
イツモカツモ セワニナルバカリ ジャノー
いつもいつも 世話になるばかり だねえ
補足:
「イツデモカツデモ」とも言った。これが縮まったと思われる。促音で「イッツモカッツモ」とも。
931
'ツヤラ
いつかしら
 
S
イツヤラ アガナコトー イヨッタノー
いつかしら あんなことを いってたね
補足:
共通語でも言うが頻度が少ない。
90
イトーシ'
きのどく
 
SMK
B
ナクナラレタンデスカ、イトーシーコトヨノー
お亡くなりになったのですか、きのどくなことよね
補足:
共通語の「いとおしい」なのだろうが、ニュアンスが異なって使われる。
91
イナゲナ
変な、妙な
 
SMHKZGIFN
C
アンマリ イナゲナコター ユーナヨ
あまり 変なことは 言うなよ
937
'トーモカ'ユーモナイ
痛くも痒(かゆ)くもない
 
S
ワリーコトー シトランケー イトーモカユーモナー
悪いことを してないから いたくもかゆくもない
92
イナ'
帰らせる
 
SHZN
B
モドッテクルマデ イナサズニ オケーヨ
戻ってくるまで 帰らさずに おけよ
関連:96「イヌル」
93
イニガケ
帰途上
 
SM
B
キョウーワ イニガケニ ヨレーヤ
きょうは 帰りがけに よりなさいよ
補足:
「イニガケ」は途中、94「イニシナ」は帰る時に使うが、混同使用もある。「カエリシナ」とも言った。
94
イニシニ(イニシナニ)
帰途のさい
 
SMF
B
ゼニャー イニシナニ ヤルヨー
かねは 帰るときに やるよ
関連:61「イキシニ」
95
イニ'コム
はいりこむ、へこむ
 
F
A
ワシノウチャー アコノ イニコンダ トコヨ
わたしのうちは あそこの はいりこんだ ところだよ
補足:
「入り込む(いりこむ)」の行訛であろう。
96
イヌ'
帰る
 
SMHKZIN
C
モー ソロソロ イヌルコロニ ナッタノー
もう そろそろ 帰るころに なったねえ
97
イバエル
結ぶ
 
MF
A
コリョー イバエテ クレーヤー
これを むすんで くれよ
同意:109「イワエル」
98
イビ'
ゆび(指)
 
SMZF
A
イビュー クワエテ ミットモナーノー
指を くわえて みっともないねえ
補足:
「ゆび」の行訛。イビューの「ュー」は「を」で、前の語の母音iと連結した時。
933
イビ'
からかいいじめる
 
SH
アンマリ イビリヨルト インデシマウド
あまり いじめていたら 帰ってしまうぞ
99
イビシー(イビセー)
おそろしい
 
SMHKZGFN
A
アカー イビシー トコロデヨー
あそこは 恐ろしい ところだよ
同意:149「エベセー(エビセー)」、189「オットロシー」
100
イビシガリ
臆病者
 
MF
A
イビシガリガ、 イビシーコトガ アルモンカ
臆病者めが、 恐ろしいことが あるものか
101
イマ'
腰巻
 
SMHKFN
A
イマキワ モー センジャロー
腰巻は もう しないだろう
102
イマサ'
さっき、つい先ほど
 
MHK
C
イマサキ ユータノニ モー ワスレタンカ
さっき 言ったのに もう 忘れたのか
103
イモーヒク
恐ろしくなって逃げ腰になる
 
KFN
A
アノトキャー アブノーテ イモーヒータデヨ
あの時は あぶなくて しりごみしたよ
補足:
イモは「肝(きも)」の行訛であろう。
104
イラウ
さわる、いじる
 
SMHKZ
C
イロータラ イケンド
いらったら いけないよ
105
'
いつもイライラしている者
 
HK
B
アンナー イラジャケー ノー
あいつは いらいらした性格のやつ だからなあ
106
イランコト
余計なこと
 
F
C
イランコター イワンヨーニ センニャー
不用なことは いわないように しなければ
107
イリ'
煮干し
 
SK
C
イリコノ ダシノホーガ アジガ エーヨ
煮干の だしのほうが 味が よいよ
補足:
イリコは大阪以南で言われていたが、今日では全国で通用する。
108
イロメ
顔色(かおいろ)
 
HZFN
A
イロメガ ワリーガ ドーシタンカイ
顔色が 悪いが どうしたのかね
109
イワエル
結ぶ
 
SMHKF
B
ナンデ コリョー イワエタンカ
どうして これを むすんだのか[方法・理由]
同意:97「イバエル」
110
イングリモングリ
動作が非常に鈍いこと、くねくね
 
SHNK
B
イングリモングリ スナヤー
しゃんしゃんと はやくしろよ[逆な言い方]
補足:
「動作が非常に鋭いこと」とあったが、逆であろうから直した。なんともおかしな言葉だが、意外と全国的に
多くの地域で使われている。
111
インヤ(インニャ)
いいえ[否定の答え方]
 
SMZFN
C
インヤ、 ワシャー センヨ
いいえ、 私はしませんよ
同意:128「ウンニャ」。類似:54「イイエノー」