中国の ご 方言のことじゃなーんで


ここは、いわゆる広島弁の中でも呉地域の方言を集めたものです。胤森弘が書き残した
「呉方言50年の衰微」から使用例を抜粋し、私が方言を喋り 内容を補足しました。
「呉方言50年の衰微」とは記述での注意点著者・胤森弘と私呉方言の特徴

あ行か行さ行た行な行は行や行ら行ワ/ン

  整理番号|呉方言('は強アクセント)|共通語で意味|資料記号|現代の使用頻度 A:知らない ~ C:よく使う

846
モーモー
[幼児語]
 
F
N
補足:
呉とか広島だけの言葉・表現でもなかろう。これを方言として取り上げると、メーメーやチューチュー、たくさん
の擬声があろう。
847
モク'
落ちた枯葉
 
N
A
モクヒロイニ イッテコイヨ
落ちた枯葉を 拾いに 行ってこいよ
補足:
共通語で「もく」はタバコの隠語で、「もくひろい」はタバコの吸殻を拾うことだ。広島弁ではそうではない。
関連:341「コクバ」(松の枯葉)
848
'
婿(むこ)
 
MHFN
B
エー モコー モロータンジャゲナノー
よい 婿を もらったんだそうなねえ
849
~モグレ(~モブレ)
~だらけ
 
SZ
C
ドロモグレニ ナルマデ アスンダンジャノー
泥だらけに なるまで 遊んだんだろうねえ
補足:
最近の共通語では「~だらけ」よりも「~まみれ」が多い。モグレの用例は他に「砂もぐれ」「血もぐれ」など。
参考:425「シワモブレ」(しわだらけ)、606「ドロモグレ」
850
モゲ'サク
変人、偏屈
 
KFN
A
アノ モゲサクノ ユーコター キクナヨ
あの 変人の 言うことは きくなよ
補足:
どうも人を悪くいう言葉が多い。さしづめ共通語なら「ぬけさく」か。類似:771「ヘンクー」、772「ヘンコツ」
851
'ゲニスル
のけものにする
 
HK
A
アイツァー トートー モゲニサレトラー
あいつは とうとう のけものにされているよ
補足:
原形は「もぐ」で、果物などをとる(収穫する)ことを言う。良くないものを“もいで”除(の)けることが転じたの
だろう。
852
モツキ
おむつ
 
SHKFN
A
モー モツキワ ハズシテヤレヨ
もう おむつは はずしてやれよ
補足:
意味を「おむつ」にしているが広島では「おしめ」だ。「むすび「と「にぎり」では「にぎり」のように。
853
モテ'
我慢できない
 
SMHKF
C
イクナユーテモ モー モテンケー イカシテクレ
行くなといっても もう 我慢できないから 行かせてくれ
補足:
「モタン」とも言った。否定語だが、肯定はないようだ。語源は「持つ」ではなく「待つ」で、「待てん(まてな
い)」だと推測する。
854
~モッテ
~ながら
 
K
B
アルキモッテ タベルナヨ
歩きながら 食べるなよ
855
モトーラン
筋が立っていない、わけのわからない
 
ZGFSHK
A
モトーラン ハナシュー ヨー スルノー
わけのわからない 話を よくするなあ
補足:
「つまらない」も含む。とにかくあきれたり、落胆して使う。
856
モブ'ル(モブレル)
まぶす
 
SKHZN
B
キナコー マブッテクレー
きな粉を まぶしてくれ
補足:
849「~モグレ(~モブレ)」(~まみれ)と根っこは同じ言葉ではないだろうか。
857
モグレツク(モブレツク)
まといつく、じゃれる
 
SH
B
ソガニ モグレツクナヨ
そんなに まといつくなよ
補足:
これも849「~モグレ(~モブレ)」(~まみれ)と根っこは同じ言葉だろう。
858
モメサンカエス(モメヒチカエル)
もめ通す
 
SHKGFN
A
ショッチュー モメサンカエシトルノー
いつも もめどおしだねえ
補足:
おもしろい言葉だ。「もめ(もめる)」と「かえす(ひっくりかえす)」の間の「サン」も「ヒチ」も語呂だろう。
859
モモグル
もてあそぶ
 
SGMHKZFN
A
モモグッテ ステルヨーナ コター スナヨ
もてあそんで 捨てるような ことは するなよ
補足:
858「モメサンカエス」のように、「モモグリカエス」という言い方もある。「~カエス」は「さんざん~する」
というニュウアンス。
860
モヤイ
共同
 
MHFN
A
コリャー ミンナノ モヤイニ シトコーヤ
これは みんなの 共有に しておこうよ
補足:
「舫ひ」と書く古語。もともと船をつなぐことをいい、転じて人と人、自然と人との関係から「共同/共有」の
意味を持つ。「モヤイッコ」という軽い言い方もする。
861
モヤスイ
たやすい
 
SHFN
A
コガニ モヤスイノガ デキンノカ
こんなに たやすいのが できないのか
補足:
同意:832「ミヤスイ」。 一般には「ミヤスイ」で、私は「モヤスイ」を呉で聞くことはなかったが、広島では
聞いた。年代よりも地域によるのかもしれない。
862
モチート
もう少し
 
SFN
C
モチート キレーニ カケーヤー
もう少し きれいに 書けよ
補足:
本来は「モーチート」(もう少し)なのだが、「モチート」(もすこし)も多く使った。これらは感情で使い分けたよう
に思う。